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マンスリーゾディアックとは 日本語で言えば「毎月の12星座」です。

太陽の通り道「黄道」 そこには12個の星座が配置させていおり、毎月30度ずつ進んでおります。それを「黄道12宮」と言います。

そこの場所を太陽が通過するとき、「○○座」という表現になります。 (私の誕生日は○○座) マンスリーゾディアックでは毎月の太陽星座を見つつ、その星座に隠れている「教科書には書かれていない星座の事」をピックアップしてまいります。 どうぞお楽しみに☆

 

第4回【蟹座について】

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■蟹座は“落下”して別世界へおりていく

蟹座は一般的に、「家庭的」で「気配りができてやさしい」星座というふうに言われています。ところが、実際に蟹座の性質が強い人をみていくと、むしろ「頼りがい」や「パワー」を感じさせる人がたくさんいます。それこそ、結婚して家庭に入るより、仕事をバリバリこなして自分の会社を興している女性や、わき目もふらず自分の仕事に没頭し続々と作品をうみだしているクリエイターなどなど。じつはタロットカードの「征服者の戦車」というカードは蟹座に関連付けられているのですが、まさにそんな威風を感じさせるんですね。

これは、どちらかが間違っていて、どちらかが正しいのでしょうか?ちょうど、前の星座である双子座は、そうしたあれかこれかといった単純な二元論(正と誤、右と左、光と影etc)に振り回されるのではなく、その背後に隠れた第三の選択肢の「開示」を担うという役割がありましたが、ここでもその答えは「NO」です。つまりどちらも正しい。表面的には、こうした矛盾する要素をもっているかのように見える蟹座ですが、そこで止まっていたのでは蟹座の本質にはたどり着けないでしょう。以下、少しずつそのシンボルが持つ深みへと触れていきたいと思います。

牡羊座から数えて3番目の星座である双子座のキーワードは、遊ぶ子供や蝶などに象徴されるような「軽やかさ」や、「二元論からの飛翔」でした。これはちょうど上向きに頂点をもつ三角形のイメージにあたりますが、4番目の星座である蟹座は、そこへさらに下向きの頂点を加えた四角形にあたります。これはホロスコープの円環を下支えする基盤であり、また、点が4つあって初めて立体が形づくられるように、4という数字自体がひとつの「世界の完成」をも意味しています。

じつは蟹座の「家庭的」というキーワードも、このあたりが関連しています。双子座が、とにかく外界へと自由に放たれる個の伸びやかな飛翔だとすれば、蟹座はちょうど樹木の芯を覆う年輪のように、自らを囲い込み、そこでじっとしていることのできるような、自分だけの基地やテリトリーを持つ感覚に通じているんですね。つまり家庭というのは、そうしたテリトリー意識のひとつの表れであって、実際には自分の会社やアトリエであっても構いませんし、地域や国家へと広がっていくこともあるでしょう。いずれにせよ、それらの芯にあるものは、三角形の頂点から四角形を完成させるため下向きにまっすぐ降りていく“重力”であり、それは自らのルーツや過去とのつながりなんですね。そして、その芯をもとにどこまで自らの基盤やテリトリーを広げていくことができるかが、蟹座にとって重要な課題となっているんです。

ここでぜひ、子供の頃のことを思い出してみてください。最初こそ、周囲の外界をあちこち無軌道に遊びまわっていても、そのうち、どこかしらお気に入りの場所を見つけて、そこに何度も足を運んでいませんでしたか?やがてお気に入りの場所には自分の宝物をこっそり運んで隠したり、悲しいことがあった時にはそこでじっと過ごして気持ちを鎮めてみたり、何かしら特別な意味をもつ秘密基地となっていったはず。そしてそれが家の押入れであれ、裏山の木立の中にあるくぼみであれ、秘密基地は単に空間的に他と区別されていただけでなく、特別な時間の流れが支配するもう一つの別世界であり、失われた始源へとおりていくためのタイムマシン(時間装置)でもあったのではないでしょうか。

そう、ちょうどアリスが白うさぎを追って樹の根にあいた穴へとびこんで、不条理と非現実の支配する地下世界の夢の中へと落っこちていったように。あるいは、『ドラえもん』におけるのび太の机の引き出しのように。“重力”にしたがって世界の下へと降りていくというのは、例えばたまたま目に入った何気ない光景や、鼻腔をくすぐる匂い、耳にしたどこか懐かしい音などなど、そうしたありふれた日常の一コマを通してすっと空想や想像の世界へと旅立っていくことでもあるんですね。そうやって、目の前にある現実をより豊かに、より魅力的な現実へと完成させるために、別世界へとまい進していく=“落下する”ことこそが、まさに蟹座の本能なのだと言えます。

では、そうした本能に従ってまい進していった先には、いったい何が待ち受けているのか?それは蟹座のほぼ中央にあるプレセペ星団が、古代中国で“鬼”と呼ばれていたことからも明らかでしょう。“鬼”とは「霊魂」の意味で、多くの幽霊や、死体からたちのぼってくるガスを表していました。また古代エジプトでは夏至の頃こそが一年の始まりであり、蟹座はそこからこの世に霊魂が吹き入れられてくるトビラのようなものだったんですね。日本の古事記に出てくるように、イザナギが亡き妻イザナミを連れ戻すために降っていった黄泉の国こそ、蟹座的な別世界だったわけです。あるいは、死んだ妻をあの世まで追っていこうなんていう、イザナギのぶっ飛んだ行動力も蟹座特有の「パワー」と言えるかも知れませんね(もっとも、その後二人はケンカ別れするんですが)。

■個を明け渡すイニシエーションの場としての別世界

さて、一口に黄泉の国などというと、娑婆での行いを審判する鬼のような閻魔大王や、死者の霊のうごめくおぞましいイメージと重ねてしまうかも知れませんね。でもそれは、やはり一面でしかないんです。むしろ、もともと黄泉の国とは「妣(はは)の国」とか「ニライカナイ(他界信仰における楽土)」と呼ばれる生命や富の根源の地であり、非常にポジティブなイメージもあったとも言われています(『海上の道』柳田國男)。ところが、仏教が普及して、しだいに死者への畏れがみずからの死への恐れへと塗り替えられていく過程(死の個人化)で、それが逆転していったんです。そういう意味では、蟹座特有の落下による時間遡行とは、孤立や孤独など、みずからの死への恐れ(双子座的な発想)を、本来の死者への畏れ(先祖や大地への帰依)へと元に戻していく過程であり、それは一種の通過儀礼なのです。

そして、その際、そうした通過儀礼の場としての別世界に特徴的なのが、「俯瞰的な視点」がそこに存在しないという点です。これは例えば絵本『おしいれのぼうけん』などでもそうですが、別世界というのはたいてい真っ暗で見通しがきかなかったり、狭くて曲がりくねっていて、まさにダンジョンと呼ぶにふさわしい場所で、通路はトンネルのようです。そして、そこを通り抜けていくというサバイバル体験は、私たちが普段の世界で少なからずしている「客観的に自分を把握することによる世界の再構成」を許されない、という経験でもあります。ダンジョンというのは、社会的地位だとか、周囲と比べてどうだとか、そういったことは一切意味を持たない世界なんですね。つまり、自分の外へと意識を立たせることができないため、逆に自らの等身大の身体性のみを意識せざるを得ない訳です。

このあたりは、『日本霊異記』などの蘇生譚(ヨミガエリ)や、エジプト神話の太陽神ラーの生まれ変わりなどに共通する、「冥土から戻ってくるためには魂の宿るべき身体が必要とされる」という考え方とも重なってきます。他人から見えている自分であるとか、頭で考えて思い描いた自分といった、客観的な尺度とは別の、物理的にも精神的にもぴったり重なり合った、等身大と言うしかない自分を再発見することこそが、別世界におけるイニシエーションの鍵であり、蟹座のテーマなんです。健全な魂は健全な肉体に宿る。それは、肉体をもっていきる地上の生に、ぴったりと精神が投影されているということでもあります。

それは、「外(どこか遠く)」×「上(上昇)」の方角にのみ、人生を決定付ける実感を模索しがちな現代人の感覚とは逆に、「中(すでにある)」×「下(下降)」の方角へと自らを低めていく、蟹座特有の“無理のない”生きる実感の求め方とも言えるでしょう。ここでいう「すでにあるものとつながる」実感とは、つまり「過去に存在した様々なものと溶け合う」ことへの迷いのなさであると同時に、個が自らを集団に明け渡す潔さでもあります。これは、自分の好きなものや、懐かしさを感じる記憶、悲しいけれど忘れられない出来事、それらを取り巻く人々。そういった感情の集合体に取り囲まれ、一体となることは、自分が周囲と比較して優れていることの証明よりまっさきに優先されるということです。

言い換えると、双子座がいかに横並び状態から抜け出し、出すぎた釘となるかを志向するのに対し、蟹座はむしろすすんで打ち込まれた釘の一つとなって、自らの属す家やテリトリーを確かなものにしようとする、とも言えますね。

ただそういうと、「蟹座ってなんか地味だな」と思ってしまうかも知れませんが、やはりそこは「戦車」も搭載している蟹座のこと。水が高いところから低いところへと流れていくように、蟹座はたとえ先の視界がゼロで、どうしたらいいのか分からない状況にあっても、いちいち悩んで立ち止まってしまうのではなく、思い切って前進するという、通過儀礼の際の鉄則に裏付けられているんです。これもある意味で、自らを明け渡すことのできた者の強みと言えるかも知れませんね。

 

■蟹座は“死者との共同体”に支えられる

蟹座は月によって支配される星座ですが、占星術的に月は新鮮味ある刺激よりも、やはり古くから馴染んでいるものを受け入れようとする天体です。この「馴染んでいる」という感覚は、数多く繰り返されてきた「ありきたりさ」の上で初めて成り立つ感覚ですが、そうやって過去から連綿と存在する馴染み深いありきたりさを複写して、再現しようとするのが蟹座の「すでに感じたことがあるものに囲まれる」というやり方でした。

この点について、より蟹座の接しているリアリティーを浮き彫りにすると思われるのが、たとえば東アジアで古来より「首都」を意味する「京」という漢字の成り立ちです。『漢字百話』(白川静)によれば、この字の成立ちには以下のようなエピソードが秘められているそうです。

「国の都を京都という。京は城門の象であるが、その門は戦没者の屍骨を塗りこんで作った。(中略)戦役の勝利者は、敵の屍骨を集めて塗りこめ、その凱旋門を都城の入り口に建てたのである。これもまた隠れた祈りである。この怨念に満ちた死者たちの怒りは、すぐれた呪霊を発揮するものと考えられた。」(p34-5)

つまり蟹座の踏襲する「ありきたりさ」とは、「人は必ず死ぬ。死んで思いを遺す」ということに他ならず、この世(3次元世界)の接している別世界(4次元)とは、隠された祈り=死者の思いに満ち満ちた近傍(実はすぐ近くにある)霊界でもあるということ。そうであるならば、蟹座の接する別世界や、進んでいるダンジョンというのは、実はほとんど日常に重なっているんですね。そう考えると、蟹座が実は12星座一の妄想屋さんなのも、うなづけることでしょう。

そもそも月というのは、満ちては欠けるその様から、古代人に何にもまして「死」を想起させた哲学の起源であり、畏敬の対象だったんです。そういう意味では、古代人にとって、月=死がごく身近なものであったように、死者たちや霊界の存在もまた、けっして“妄想”などではなく、現に働きかけられ、逆にこちらから働きかけることも可能な“実在”だった訳です。

現代社会は、日常世界から死や死者を秘匿し、一切のコミュニケーションが断絶した「外」へとそれらを置くようになりましたが、実際にはどうでしょうか。R・シュタイナーなどは「地上に生きる人間は、睡眠時も覚醒時も、死者との共同社会を生きている」といった主張をしていますが、月に守護された蟹座が、そうした死者や先祖らの気配や意図を察知し、それを読み取ると同時に、彼らにも気遣われているというコミュニティーの最中に、自然と身を置きやすいのだという話も、あながちあり得ないものではないでしょう。むしろ蟹座の細やかな「気配り」を可能にする感受性は、そうした日常の世界の背後に潜むかすかな声や思いを受け取り、その身に引き受ける度量を持つことで、より研ぎ澄まされていくものだと思うのです。あるいはもっと積極的に言えば、そうした目に見えないつながりを見える化してしまおうというのが、蟹座の目指すところなんですね。

まぁ霊界とか死者とか言うと、ちょっと引いてしまうかも知れませんが、たとえば次のように考えれば、そういう世界もごく当たり前のことと感じられるはず。

自分の父と母を第1代として、逆に遡って先祖をカウントしていきますと、単純計算でも10代で2046人、20代で209万7110人、30代では実に21億4700万人以上の先祖が存在することになるんです。つまり、人間一人のいのちでも、垂直方向に次元を伸ばしていけば、それだけの数の死者たちがなす共同体との関係の上に成り立っている訳ですね。

それを踏まえた上で、繰り返し大事になってくるのは、そういう自分を支えてくれている、亡くなっていった人やもの、風景たちへのつながりを「個(性)の消滅」として恐れるのではなく、「畏れをもって自らを明け渡す覚悟をもつ」ということです。これは 双子座的な個人主義的発想の限界を越えるということでもありますが、それにはある種の通過儀礼的なイベントを伴うでしょうね。ただ、それをくぐりぬけた向う側には、等身大の自分というものにたえず立ち返りつつ、自分がその一部となって全体を支えるような、大きなやしろや建造物など、確固としたひとつの世界の形が見えてくるはずです。

2013年6月末から1年間、木星は蟹座に入ります。約1年後のこととは言え、やってくるのはあっという間。ひとつの世界の完成を意味するその時期に向け、いかに広い意味での「引越し」をはかるか、それが今の時期(来年の6月まで)のテーマと言えます。

 

蟹座のKeyword:
征服者の戦車・テリトリー意識
四角形・世界の完成・支える基盤

下降する重力・タイムマシン・落下するアリス・時間遡行
秘密基地・別世界・地底・迷路・黄泉の国・生命や富の根源の地
霊魂・等身大の身体性・ヨミガエリ

個を集団に明け渡すこと・死者との共同社会・目に見えないつながりの見える化
「中(すでにある)」×「下(下降)」・ありきたりさ・打ち込まれた釘の一つ

12星座一の妄想屋さん

 

 

sugerSugar(シュガー)
1983年7月31日生。慶應義塾大学哲学科卒業後、ベンチャー企業の営業職を経て、より多くの人に占星術の面白さを伝えるべく、占い師の道へ。現在、対面鑑定・講座・執筆などを中心に活動中。男性占い師ユニットNOT FOR SALEメンバー。

 

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