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第十一回:遊佐町の小正月行事「アマハゲ」

 

 あけましておめでとうございます。東北もお正月を彩る伝統行事で年が明けました。今回は、庄内地方の最北部にあ

 遊佐町の小正月行事「アマハゲ」を紹介します。

 年が明けた1月1日、3日、6日に行われ、滝ノ浦(たきのうら)、女(め)鹿(が)、鳥崎(とりざき)の三つの集落に受け継がれている民俗行事です。このアマハゲは、終戦前までは、旧暦の1月15日の夜に行われていた行事でした。戦後は、新暦の1月6日に行われることが決められていましたが、時代が進むにつれて生活様式が変化し、行事に対する価値観も大きく変化したことにより昭和47年から昭和48年の2年間、アマハゲが一時中断されていました。その後、行事を継承する地域と集落の人々の協力により、昭和49年から再びアマハゲ行事が行われるようになりました。平成11年には、「遊佐町の小正月行事」として、子供達による「鳥追い」行事、古札・しめ縄・アマハゲが身に付けた衣装を焼く「ホンテ焼き」の行事と共に、国の無形民俗文化財に指定されました。その後も「アマハゲ」は、長い年月の中で、現代に受け継がれています。今年、1月6日に行われた鳥崎のアマハゲ行事を中心に辿って行きます。

 

「アマハゲ」ってどんな行事?

 アマハゲは、秋田県・男鹿市の「ナマハゲ」と似た行事の特徴を持つ神の来訪を祝う行事です。アマハゲが身に付けるものは、主に面、「ケンダン」と呼ばれる藁蓑、黒足袋、下駄です。集落により番楽面と呼ばれる神楽舞用の面、神社周辺の地名から命名された面を着けます。体には、着物・下着の上に「ケンダン」を何重にも全身に巻きます。昔は、ケンダンの下にモンペを履いて「ノメゾウ」と呼ばれる藁製の履物を履いていました。現在は黒足袋に下駄を履いています。アマハゲは、秋田のナマハゲのように包丁や桶、御幣等を持たない特徴があります。アマハゲが身に着けたケンダンは、各家々を廻った後、浜で、その日のうちに古札・しめ縄と共に焼かれます。そして行事の最後に、家々を廻る「アマハゲ」に参加した者達によって、神事としての酒と食の儀式「直会(なおらかい)」が行われます。

 

「アマハゲ」には、どんな意味があるの?

 アマハゲは、大きな音を立てて荒々しく家に来ては、子供を追いかけ、勢いよく抱き上げます。子供達は泣き叫びますが、アマハゲに抱き上げられることで「子供の厄除け」が行われます。その他にも、この行事が農耕の行事と深く結びついていることから「五穀豊穣」「子孫繁栄」の意味を持ち合わせています。行事が行われている間に、アマハゲが全身に巻いている「ケンダン」から藁屑が落ちます。これを「コモジ」と呼ひます。そのコモジを集めて、白い紙を敷いた上に置き神棚に供えます。現在は、竈(かまど)のある家庭は少なくなりましたが、このコモジは、1月7日七草粥を炊く時の火の材料にします。アマハゲを家に迎える時は、丸餅を二つ用意します。そして家により、酒や肴でもてなします。アマハゲは頃合いを見てこの二つの餅を受け取ります。最初に行く家では二つのうち一つの餅をその家の「福」として残し、二軒目以降のに行く家では、二つの餅を受け取った後、他の家で受け取った餅を一つ、置いていきます。これは、アマハゲが各家を廻る際に行います。

 

鳥崎の「アマハゲ」

 鳥崎集落は、かつて鳥海山の登り口の一つで、集落が出来たのは江戸時代初期とされています。昔は、アマハゲは15歳から25歳までの男性にて行われていました。現在は、集落の男性により行事が行われています。1月6日の朝に集落の男性が三上神社に集まり、アマハゲが身に纏う「ケンダン」を作ります。その後、「面開き」の神事が行われます。鳥崎では、「岩倉」「笠森」「水坪」と神社周辺の地名から名付けられた面を使います。神酒を頂いた後、三体のアマハゲは、太鼓鳴らしや鈴振りの者と一緒に各家を廻ります。

 

勢い良くアマハゲに抱き上げられる子供  

厄払い後に子供を見るアマハゲ  

勢い良くアマハゲに抱き上げられる子供 【刈り取りしたほうききび】
   

厄払いを終えた子供達とアマハゲ  

アマハゲが置いた「福」の餅  

勢い良くアマハゲに抱き上げられる子供 アマハゲが置いた「福」の餅

 

 太鼓や鈴の音で、アマハゲがやって来るのがわかりました。家の中に入り、その家の神棚、ご主人に挨拶をしてから、大きな足音を立てて荒々しく部屋にやって来ました。最初に、用意した酒や肴でアマハゲをもてなします。神酒の他にお膳には、昆布巻き・銀杏・ごぼうの煮物・庄内の正月料理のこづけがありました。それとは別に、盆にスルメが盛られていました。もてなしの後、アマハゲは子供たちを追いかけ、抱き上げられると、子供達の悲鳴に近い泣き声が部屋中に響きました。抱き上げた後、アマハゲはそっと子供を床へ下ろしました。そしてお年寄りたちを労い、肩もみをしていました。、鳥崎のアマハゲは肩もみをするのが特徴です。用意した二つの餅は、アマハゲが誰にも氣づかれないように受け取り、他の家で受け取った餅を一つを置いて行きました。この「福」としても餅は、他の家からの福餅でもあります。「他福は多福」日本の文化は、同じ音で文化を繋いできました。アマハゲは子供達の厄を祓う行事と共に、集落に住むお互いの家の「多福」を願う行事として、今に受け継がれています。

 

 

 

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塩田 紀久代 (しおひめ)


 *和文化おもてなし研究所 代表
 *伝統文化むすび使・和文化おもてなしコーディネーター

 

1974年 山形県・鶴岡市出身。
幼い頃より父の影響を受けて、山村の年中行事に親しむ。
2006年 母の病気・他界を機に、約12年携わった
ショービジネスのマネージャー業からホテル・旅館業に天職する。
旅館の新規開業・再生事業を行う、おもてなし部署に所属する。
箱根・強羅温泉、静岡・修善寺温泉にて旅館業全般に携わる。
帰郷後、ホテルに入社。マネージャー職となる。
半年後には、ホテルが「ハイクラスの宿」となる。

 

和の文化を通して人と地域をむすび 社会にたくさんの笑顔をつくることを理念に
2012年10月「和文化おもてなし研究所」(商標登録)を開設。
子どもの着付け、女性のしぐさ。季節の年中行事を通して、
暮らしに生きるおもてなしの提案を行っている。
受け継がれた和の文化とおもてなしの心を未来につなぐ活動として
「見返り美人になって和のおもてなしを学ぼう」講座を開講。

 

2013年10月公開予定 映画「おしん」の制作に所作指導として映画撮影に携わる。

 

 

ホームページ http://wabunka-omotenashi.jimdo.com/

映画「おしん」公式サイト http://pr.livedoor.com/movie/oshin/