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しおひめの「和文化おもてなし」~人と文化がつながる時間~

 

第十回:人と地域をつなぐ「槇島ほうき」

 

 季節の行事を辿ってゆくと「道具」が出てきます。日本の道具の中でも、これから年の瀬に向けて使うことの多くなるものが、ほうき。今回は山形県・庄内町の伝統文化「槇島ほうき」を紹介します。

 地域の伝統文化を肌で体験しようと、今年の夏に「ほうききび」の刈り取りから脱穀、ほうき作りに参加しました。槇島ほうきは全て手作業にて作られています。ほうきが作られる過程の一つに人の想いが込められています。ほうきばかりではなく、日本の道具には、樹木から作られているものが多くあります。お正月に鏡餅を供える三方や酒樽も日本の道具です。道具作りは、ただ物を形を作ることが道具作りではなく、植物の種を撒き苗を作るところから始まっています。

 今年は6月1日に、ほうききびの苗に植え付け作業が行われました。庄内は入梅前にあたります。梅雨時期に土に根をおろした苗は根を伸ばし、梅雨明けとともに大きく成長します。刈り取り作業が行われる8月末までには、ほうききびの背丈は、約2メートルを越える高さまで伸びていました。苗の植え付けと刈り取り作業は、庄内地方を始め、県内外からボランティア・スタッフによって行われています。刈り取り作業は朝6時から始まり朝10時までの4時間作業が行われます。8月31日と9月1日、日の出と共に家を出て集合場所に向かい、集まった約80名の「槇島ほうき応援隊」の皆さんと一緒に作業を行いました。ほうききびの出来は、収穫の年により大きく異なります。今年の夏、庄内地方は例年にない程、雨の日が続きました。梅雨明け後も雨と日照不足により、ほうききびの背丈は低く、ほうききびの先端に成る赤い実が小さく・少ない状況でした。

 職人の方とお話をした時、畑では、ほききびを選別し刈り取りを行っても、実際に商品用のほうきづくりに使われるものは三分の一に満たない年もあることを初めて知りました。

 ほききびは、自然の恵みです。人が「こうあってほしい」と望んでいても、人の思うように行きにくいのが自然と大地の特徴です。だから人は、暦から見た季節を元に、節目の日、予祝として豊作を願う行事を行います。

 

【ほうききび畑】  

【刈り取りしたほうききび】  

【婚:振袖】  【刈り取りしたほうききび】

 

 刈り取り作業が終わったほうききびは、写真のように十字にして乾燥させます。約二週間後には、脱穀作業に入ります。乾燥したほうききびを機械にかけて、ほうきの先端部分にある赤い実を取り除いていきます。各畑で取れたものを脱穀、選別して10本ずつの束にします。取り除いたものは、実際にほうきを作る材料になります。

 

【ほうききび脱穀作業】  

【槇島ほうき】  

【冠:七五三の着物】  【槇島ほうき】 

 

 槇島ほうきは、ほうきの「こし」にあたる部分が、市販のほうきに比べて硬くて弾力があるのが特徴です。ほうきを床につけ掃除をしている時にも、力を入れても形がすぐに戻ります。そのため、丈夫で長持ちします。昔から槇島ほうきを一度使うと、50年~60年持つともいわれています。家庭では、二世代、三世代まで受け継がれている手作りのほうきです。

 現在、槇島ほうきは数少ない貴重なものとなり、東京のセレクトショップだけでの販売になりました。商品としての槙島ほうきを地元の人が、見ること・手にすることは難しくなりました。そこで2011年から、庄内町・槇島ほうき手作りの会を中心に、地元の人にも槇島ほうきを残していこうと、ほうききびの苗の植え付け、刈り取り作業のボランティア・スタッフの方を対象に「ほうき作り体験」が始まりました。

 脱穀作業から約2ヵ月後の11月23日と24日に、槇島ほうき作りが行われました。
この日を楽しみに、全国から槇島ほうきを作りたい人たちが集まりました。

 11月23日、この日集まったのは約30名。全てボランティアで作業に参加した人たちです。

 ほうき作りの説明の後、ほうきを結ぶ「基本の結び」を覚えてからほうき作りです。ほうきを柔らかくする為に、木槌で軽くたたいてから好きな色の糸を結んでいきます。ほうきの枝の部分を結ぶにも、ギュッギュッと力強く結ばなければならないので、結構な力も要りました。(私は、職人さんに何度も手伝って頂きました)約二時間後、槇島ほうき(ミニほうき)が出来上がりました。ほうき作りで使われている糸は染められた糸です。ほうきのもち手に使う布は、地元のお母さんが、ほうき作りの日に合わせて揃えてくれたものでした。私も、出来たほうきを最後に、槇島ほうきの職人さんに形を整えて頂きました。

 出来上がったほうきに、同じものは一つとしてありません。世界でたったひとつの手作りほうきです。自然の恵みに、人の手で作られた一本のほうき。槇島のほうき作りは、文化と共に人と地域を繋いでいます。

 

 

 

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塩田 紀久代 (しおひめ)


 *和文化おもてなし研究所 代表
 *伝統文化むすび使・和文化おもてなしコーディネーター

 

1974年 山形県・鶴岡市出身。
幼い頃より父の影響を受けて、山村の年中行事に親しむ。
2006年 母の病気・他界を機に、約12年携わった
ショービジネスのマネージャー業からホテル・旅館業に天職する。
旅館の新規開業・再生事業を行う、おもてなし部署に所属する。
箱根・強羅温泉、静岡・修善寺温泉にて旅館業全般に携わる。
帰郷後、ホテルに入社。マネージャー職となる。
半年後には、ホテルが「ハイクラスの宿」となる。

 

和の文化を通して人と地域をむすび 社会にたくさんの笑顔をつくることを理念に
2012年10月「和文化おもてなし研究所」(商標登録)を開設。
子どもの着付け、女性のしぐさ。季節の年中行事を通して、
暮らしに生きるおもてなしの提案を行っている。
受け継がれた和の文化とおもてなしの心を未来につなぐ活動として
「見返り美人になって和のおもてなしを学ぼう」講座を開講。

 

2013年10月公開予定 映画「おしん」の制作に所作指導として映画撮影に携わる。

 

 

ホームページ http://wabunka-omotenashi.jimdo.com/

映画「おしん」公式サイト http://pr.livedoor.com/movie/oshin/